遺言書には、要件や形式があり、民法上では「遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない」(民法の第960条)と定められています。つまり、民法上の遺言書の要件を満たしていないと、その遺言書は法的効力を有さない、無効の遺言書となってしまいます。よって、特に遺言者自身で作成する自筆証書遺言などの場合は、これらの要件・形式に気を付けて作成しなければなりません。
普通方式の遺言書には、①自筆証書遺言、②公正証書遺言、③秘密証書遺言の3つの種類がありますが、②については、専門家立会いのもと作成するため、有効な遺言書を作成することができるといえます。よって、以下では、①自筆証書遺言と③秘密証書遺言において有効となる書き方を説明していきます。
■自筆証書遺言とその要件
自筆証書遺言とは、遺言者が、遺言書において作成した相続財産の目録以外の全文、作成日付および氏名を自書し、これに押印することによって作成する遺言です(民法968条1項)。要件は、「遺言者が自筆で遺言書を作成すること」、「遺言者が作成した遺言書に作成日付および氏名を自書すること」、「遺言書に遺言者が押印すること」です。自筆とは、すなわち手書きということであり、パソコンやワープロで作成して印字したものは認められません。もっとも、遺言書に添付する財産目録は、全てのページに署名および押印をすれば、パソコン等の印字や、通帳のコピー等をもって代えることができます(民法968条2項)。上記の要件を満たしたうえで、家庭裁判所に遺言書を提出し、検認手続きを経る必要があります。
自筆証書遺言は、遺言者自身のみで作成することができるため、最も簡単に作成することのできる遺言書といえます。もっとも、他者による内容の確認をしてもらわないため、作成した遺言書が要件や形式を満たさずに無効となってしまう危険性もあります。
■秘密証書遺言とその要件
秘密証書遺言とは、遺言者が作成し封じた遺言書を、2人の証人と公証人に提出し、遺言書の存在を明らかにしつつ、その内容を秘密にして保管する方式の遺言書です(民法970条1項)。仮に、相続開始後、誰かが家庭裁判所の検認手続き前にこの秘密証書遺言を開封してしまった場合、その秘密証書遺言は無効となります。そのため、遺言者が亡くなるまで、遺言書の内容を第三者に一切知られずに秘密にすることができるのが特徴です。また、自筆証書遺言と異なり、全文の自筆は要件とされていません。よって、要件は「署名」と「押印」を自分で行うことであり、後の内容はPCでの作成や他の人の代筆が認められています。上記の要件を満たしたうえで、家庭裁判所に遺言書を提出し、検認手続きを経る必要があります。
■遺言書の書き方
各遺言書の要件を最低限満たしたうえで、遺言書に何を書くか、また、書く際に何に注意すべきか、を把握しておく必要があります。
まず、遺言書では、①誰に何を相続させるかの指定、②相続権の剥奪、③子の認知、④遺言執行者の指定、⑤保険金の受取人の変更、をすることができます。よって、これらの効力を発生させたい場合は、漏れなく記載するようにしましょう。
そして、遺言書には、曖昧な表現は使わず、具体的に記載するようにしましょう。特に、誰を相続人とするか、何を相続財産とするか、どの割合で相続させるかについては、曖昧な表記だとトラブルに発展してしまう可能性があります。例えば相続財産が不動産である場合、登記簿謄本通りに正確に記載しましょう。土地であれば所在地、地番、地目、地籍など。詳細に記載することが重要です。預貯金については、金融機関の支店名、預金の種類や口座番号まで記載しましょう。
また、特定の相続人には遺留分侵害額請求権が認められているため、ある相続人の遺留分を侵害する内容で相続の指定をした場合、記載通りの相続がなされない可能性があります。よって、遺言書の作成段階で、相続人の遺留分についても配慮することも大切です。
有効な遺言書の書き方
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